≪事例研究3≫ 幼い子供の事故、家庭内で多発

〜転落事故を防ぐために親ができること〜

 

 近年、幼い子どもの事故は家庭内で多発しています。厚生労働省の統計によると、5歳未満の子どもの死亡事故の多くが、自宅内で発生していることが分かっています。

 

 特に転落事故は重大で、ベランダ、階段、窓などからの落下が多く、時には命を落とす悲惨なケースもあります。

 

 事故は一瞬の不注意で起こり、その結果は取り返しがつきません。子どもの事故死は親にとって一生消えない後悔となるため、事前にリスクを察知し、未然に防ぐ姿勢が欠かせません。


(1) 「リスクの気付き」は親の責任

 幼い子どもは、自分で危険を判断できません。親が「大丈夫だろう」と油断した隙に、事故は起きます。だからこそ、リスクの気付きは親の責任です。


 そのためには、親自身が「子どもの目線」に立って家庭内を見直すことが重要です。

例えば、

  • 窓際やベランダ近くに椅子や棚がないか
  • 子どもがよじ登れる家具が置かれていないか
  • 階段や玄関にゲートを設置しているか

 大人の目線では見えない危険も、子どもの視点で低い位置から確認すると意外に多く見つかります。ぜひ、今一度家庭内を子どもの目線で確認してください。

(2) 性悪説に立ち「常に最悪を想定する」

 事故防止の基本は、「子どもは必ず危険なことをする」と想定することです。つまり性悪説に立つことが重要です。

 

 「まさか、ここまでは登らないだろう」「ここは危ないと教えたから大丈夫」という考えは危険です。子どもは好奇心旺盛で、大人の予想を超える行動を取ります。だからこそ、常に最悪を想定し、先回りして対策を取ることが必要です。

(3) 転落事故を防ぐための対策

 対策は1つだけでは不十分です。なぜなら、1つの対策が100%の効果を発揮する保証がないからです。よって、1つの不具合事象に対して、2つ以上の対策を売ってください。

 

 対策事例を紹介します。

 ① ベランダに出させない工夫

 ベランダからの転落は、家庭内事故で最も危険なケースのひとつです。

  • ベランダへの扉に補助ロックを付ける
  • 子どもの手が届かない位置に鍵を設置する
  • 洗濯物干しは極力ベランダを使わず、室内干しも検討する

 「ベランダは子どもの立ち入り禁止」とするくらいの意識が必要です。


 ② 踏み台になるものを置かない

 多くの転落事故は、子どもが踏み台を使って高い場所に登ることで起きています。

  • ベランダ付近に椅子やテーブルを置かない
  • 棚やプランターをベランダから撤去する
  • 窓際にも登れる家具を置かない

 「登れるものはすべて危険」と考えて配置を見直すことが大切です。


 ③ 窓と階段の対策

  • 窓には開放制限ストッパーを付けて全開にならないようにする
  • 階段には必ずベビーゲートを設置する
  • ソファやベッドを窓際に置かない

 窓や階段は、わずかな隙間が命取りになることを忘れてはいけません。

(4) 「24時間監視」は原則、しかし現実は無理

 本来、理想を言えば24時間子どもを監視するのが事故防止の原則です。しかし現実には、家事や仕事などで目を離す瞬間は避けられません。だからこそ、監視に頼らない安全対策が必要です。

  • 危険な場所に子どもを近づけない「物理的な対策」
  • 子どもの行動パターンを把握して事故を予測する「予防的な対策」

 

 これらを組み合わせることで、親の負担を軽減しつつ事故リスクを最小限に抑えることができます。

(5) 子どもの事故死は「一生後悔する」

 子どもの事故死は、親にとって一生背負う後悔につながります。

  • 「あのとき鍵をつけていれば」
  • 「あの踏み台を片付けていれば」
  • 「ほんの数分見ていれば」

 どれも後からでは取り返しがつきません。事故は偶然ではなく、未然に防ぐことができるものです。親がリスクを認識し、具体的な行動を取ることで、多くの事故は防げます。

(6) まとめ

 家庭内での幼い子どもの事故、とくに転落事故は予想以上に多く、命に関わるケースもあります。

  • リスクの気付きは親の責任
  • 子どもの目線で家庭内の危険を発見する
  • 性悪説に立って最悪を想定する
  • 複数の対策を実行する
  • ベランダや窓際には絶対に危険を近づけない
  • 物理的対策と予防的対策の両立

 「大丈夫だろう」という油断が、一生の後悔につながります。

 取り返しのつかない悲劇を防ぐために、今すぐ家庭内の安全対策を見直しましょう。


 次は、実践編です。未然防止の具体策をお伝えします。

第4章、第5章・・・と順番に読んでいただいてもOKです。あるいは、目次をご覧になって、興味があるところから読んでいただいてもよろしいです。