1-4 ミス撲滅の方策

ミスを如何にして、撲滅するかについて、2つの視点で解説します。

(1) 許容範囲を広げる(ルールや仕様の見直し)

 ミスとは、「本来すべきこと」と「実際にしたこと」の差であると説明しました。この差を減らす1つの方法が、ルールや仕様を変更し、許容範囲を広げることです。


 例えば、製品の寸法検査において、±0.1mmの厳しい公差を±0.2mmに広げれば、同じ製造精度でも不合格品が減ります。ただし、これは顧客承認が必要であり、製品品質や安全性に影響を与えない範囲で行う必要があります。


 比喩的にいえば、「ゴルフのカップの直径を広げる」ようなもので、同じショット精度でも成功率が上がります。


(2) バラツキを小さくする(スキルアップと工程改善)

 もう一つの方法は、作業や工程のバラツキを減らし、実施結果を安定化させることです。

 

 例えば、組立工程でネジの締め付けトルクにバラツキがある場合、作業者教育やトルクレンチの導入によって、全員が同じ精度で作業できるようになります。また、作業手順を標準化し、誰が行っても同じ結果が出るようにすれば、ミス発生率は低下します。


 これは「カップの大きさを変えずに、ショットの精度を上げる」ようなアプローチで、技術向上や設備改善によってミスの再発を防ぎます。スポーツ選手が、練習によってミスを撲滅することが、これにあたります。


★ 以上、2つの方策を紹介しましたが、いずれの場合も簡単ではありません。はたして、ミスを完全に撲滅することは可能でしょうか?