未然防止活動にとって、ロジカルシンキング(論理的思考)のスキルはとても大切です。ぜひ、このスキルを習得してください。
(1) 論理的思考と非論理的思考の違い
① 論理的思考
論理的思考とは、話の筋が通っていて、矛盾なく分かりやすい考え方です。また、この考え方をうまく活用すれば、子どもでも理解できるようになります。
MECE(ミーシー)とも言います。これは「全体として漏れがなく、互いに重複がない状態」を意味し、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字を取っています。
トラブル・事故の根本原因を追究する際に、この論理的思考がとても役に立ちます。
② 非論理的思考
非論理的思考では、「たぶん」「気合いで」「とにかく注意!」のように、根拠があいまいで、数字や事実を確かめず、思い込みで決めつけてしまって、多くの人たちから共感されません。
根本原因を追究する際、この考え方では、真因に近づくことができません。この ① と ② の違いを意識して、原因追究に取り組んでください。
(2) 論理的思考法の具体例
① 具体的に定量的に一義的に、形容詞を使わずに伝える
② PREP 法(Point ⇒ Reason ⇒ Example ⇒ Point)
PREP法とは、説得力ある伝え方のことで、その順番としては、
Point(結論)⇒ Reason(理由)⇒ Example(具体例)⇒ Point(再び結論)となります。すなわち、
まずは結論を述べて、次にその結論に至った理由を説明し、事例を紹介することで、伝える内容に具体性を持たせて、最後に結論で締めるという方法です。
この逆の方法では、聞いているほうは、話し手が何を言いたいのか分からず、ストレスがたまり、理解力が低下します。小学生でも理解できるような事例を紹介します。
≪事例≫:廊下を走らない
- Point(結論):廊下では走らないようにしよう。
- Reason(理由):人とぶつかるとケガの危険が高いから。
- Example(事例):この前、角で曲がった子とぶつかりかけたよね。見えない所が多いんだ。
- Point(再び結論):だから廊下は「歩くこと」が約束。
1つご注意いただきたいことは、常に「結論ファースト」を推奨するわけではありません。たとえば、過去大変お世話になった重要顧客からの申し出を断る場合、いきなり「今回の申し出をお断りします」と言ってしまうと、喧嘩を売っているようなもので、今後の関係構築に悪影響が出るでしょう。
状況を十分に考慮して、より良い対応を取っていただくようにお願いします。
③ フェルミ推定
「フェルミ推定」をGoogle 検索すると、AIの回答は次のとおりです。
- フェルミ推定とは、厳密なデータがない状況でも、論理的な推論と限られた情報を用いて、短時間で大まかな数値や規模を概算する思考法です。
- フェルミ推定の目的は、答えの正確さよりも、問題を分解し、論理的に仮説を立てて答えを導き出すプロセスにあります。このプロセスを通じて、論理的思考力、問題解決能力、情報分析力、発想力、コミュニケーション能力を習得することができます。
フェルミ推定の例題としては、たとえば、
- アメリカのシカゴに、ピアノの調律師は何人いるか。
- 日本には、電信柱は何本あるか。
- 東京都内に、コンビニ店はいくつあるか。
なお、上記3つの例題の答えは、ここでは割愛します。興味のある方はネット検索で答えを見つけてください。
筆者が、実際にフェルミ推定に遭遇した事例を1つ紹介します。かなり昔の話ですが、高校1年での地理のテストで、筆者の友人が考えた手法が、今思えばフェルミ推定に該当することに最近気づきました。
≪地理の問題:世界の人口密度は、何人/ km2≫
- 世界の人口密度 = 世界の総人口 ÷ 地球の陸の面積
- 光は1秒間に地球を7周り半進む ⇒ 光の速さ:30万km/秒 ⇒ 地球の円周:30万 ÷ 7.5 = 4万km
- 地球の半径 ⇒ (円周 ÷ π)÷ 2 = (4万 ÷ 3.14)÷ 2= 6,369 km
- 地球の表面積 ⇒ 4π r2(r:地球の半径)⇒ 4x 3.14 x 6,369 x 6369 = 509,485,862 km2
- 地球の陸の面積 ÷ 地球の表面積 = 30% ⇒ 509,485,862 x 30% = 152,845,758 km2
- 世界の総人口:82億3200万人
- よって、世界の人口密度 = 82億3200万人 ÷ 152,845,758 km2 = 53.8 人/km
Google 検索の結果では、2025年の世界の人口密度は、1平方キロメートルあたり、「55人」とのことです。細かく言えば、有効桁数等揃っていませんが、概ね正解を得ることができます。
このフェルミ推定のすごいところは、「光は1秒間に地球を7周り半進む」という事実から、地球の円周を求めたことです。これを高校1年生でやってのけた友人には、今さらながら敬服です。
(3) まとめ
未然防止に限りませんが、論理的に物事を考えることは、とても重要です。それによって、起こっている問題の事実を整理できます。また、関係者に誤解なく分かりやすく伝えることができるので、問題をうまく解決することが可能となります。
ぜひ、日頃から論理的思考を意識して、業務にあたってください。