2-1 未然防止の定義

 再発防止と未然防止が混同されています。ここでは、まず「未然防止」について、定義します。

(1) 未然防止って何?

 未然防止とは、将来のリスクに気付いて対策し、将来起こるかもしれない(実害のある)トラブル・事故を未然に防ぐことです。このリスクに気付けば、対策はさほど難しくありません。

 

 しかしながら、未然防止は簡単な活動ではありません。それは、私たちが、将来リスクに気付けないからです。では、如何にしてリスクに気付くかについては、次章以降で、具体的にお伝えしていきます。

(2) 未然防止の価値

 「事が起こってからでは、遅い」、ここに「未然防止」の価値があります。

 

  企業や公共機関で不祥事が起こると、謝罪会見で幹部の方が必ずこう言います;「今後は、再発防止に努めます」。しかし、これは間違いで、本来なら「未然防止に努めます」というべきです。なぜなら、私たちは過去には戻れないからです。

 

 仮に、痛ましい死亡事故が起こったとしても、どんなに再発防止を実行しても、亡くなった人は戻ってきません。私たちは未来(将来)に向かって活動しているわけで、未来で起こトラブル・事故を未然に防ぐ必要があります。

(3) 未然防止は、経営理念

 未然防止は単なる手法ではなく、トラブル・事故ゼロ社会を実現するための経営理念であり、マネジメントそのものです。

 

 ある経営者がこう言います;「将来起こるかどうか分からないことにコストは使えない」。これは間違いです。未然防止をコストと捉えてほしくありません。未然防止は、新製品開発、設備投資や新卒採用を同じで、先行投資です。

 

 また、未然防止を導入することは、企業文化を大きく変えることになります。よって、現場に未然防止が根付くまでは、トップダウンで取り組んでいただきたいと思います。


★ 未然防止は未来に向けた仕事です。そして、トラブル・事故がなくなることで、仕事の生産性が向上するだけでなく、社員のモチベーションも上がります。ぜひ、みなさんの企業でも、未然防止を積極的に導入してください。

 

★ 以上、未然防止の概要についてお伝えしました。では、再発防止との違いとは、何かについて、解説します。