未然防止では、問題解決力が求められますが、必要な知見・経験は多岐にわたります。ここでは、項目の紹介に留めますが、第4章以降で、解説します。さらに詳しく知りたい方は、書籍、ネットおよび専門家から情報(知見)を習得し、それを実務で活用して、経験値を高めてください。
(1) 自社製品と業務・製造プロセス
製品の仕様・特性や使用環境、製造工程の流れと要点を正しく理解することで、設計や製造段階で潜む不具合要因を早期に発見できる。
(2) 論理的思考法(ロジカルシンキング)
事実を基に因果関係を整理し、筋道立てて問題を定量的・客観的・具体的に分析・解決する思考法。感情や思い込みを排除して、再発防止・未然防止を成功に導くことができる。
(3) 品質保証の考え方
顧客の要求品質を満たす仕組みを計画・実施・維持する活動。品質基準、検証手法、是正・予防措置の運用が未然防止の基盤となる。
(4) IE と TPS
IE (Industrial Engineering) は、作業効率化の手法。
TPS (Toyota Production System = トヨタ生産方式) は、ムダ排除と品質確保の思想。
両方とも、モノづくりの基本で、特に工程改善で有益。
(5) プロジェクトマネジメント
期限・コスト・品質を満たすため、計画、進捗管理、リスク管理を体系的に行う手法。 とくに、マスタースケジュール作成やマイルストーンの考え方は、業務計画立案で役に立つ。
(6) 心理学
人間の認知特性や行動心理を理解し、錯覚・思い込み・不注意などのヒューマンエラー要因を減らす環境やルール設計に活用する。とくに、アドラー心理学で言う「原因論より目的論」の考え方は、注目に値する。詳細は、次章以降でお伝えします。
(7) 失敗学
過去の失敗事例を分析し、背後要因やパターンを体系化する学問。水平展開には限界あり、上位概念に上って、未来を俯瞰する考え方は、究極の未然防止。詳細は、第9章でお伝えします。
★ 未然防止に王道なし。魔法のようなテンプレートは存在しません。未然防止で必要な知識は多岐にわたりますが、不足している知識は、実務を通して、1つひとつ習得してください。
★ 次の事例研究をご覧ください。
≪事例研究2≫通園バスのなかに、園児が取り残され死亡 ⇒ なぜ、園児の安全が優先されないのか?