4-5　ダイバーシティ（多様性）の尊重

　ダイバーシティ、すなわち多様性の尊重は、現代の組織が直面する複雑な課題を乗り越え、持続的に成長するための鍵となります。性別や国籍、年齢、そして文系・理系といったバックグラウンドの違いを超えて、多様な考え方や価値観を持つ人々が集まる組織は、まさに最強のチームと言えるでしょう。

　同質な人々だけで構成された組織は、確かにコミュニケーションがスムーズで、意思決定が迅速に進むという利点があります。しかし、その一方で、同質性ゆえに生じる「思考の偏り」というリスクを抱えています。

　例えば、皆が同じ業界や専門分野の経験しか持たない場合、これまでの成功体験や常識に囚われ、新しい発想が生まれにくくなります。市場の変化や新たなリスクの兆候に気づけず、結果として大きなトラブルやビジネスチャンスの逸失につながる可能性があるのです。

　これに対し、多様な組織では、様々な視点から物事を捉えることができます。ある人が見落としたリスクを、別の視点を持った人が発見したり、誰も思いつかなかったような革新的なアイデアが生まれたりします。これは、「多角的な視点」が組織の強みとなるためです。

　特に、女性の感性を尊重することは非常に重要です。論理的思考が重視されがちなビジネスの世界において、直感や共感といった女性特有の感性は、新たな顧客ニーズの発見や、より良い人間関係の構築に貢献します。

　多様性を組織内に取り込むだけでなく、組織の外に目を向けることも、未然防止の観点から非常に重要です。

　同じ業界の人々とだけ交流していると、視野が狭くなり、業界特有の「常識」が絶対であると錯覚してしまうことがあります。しかし、一見まったく関係のない異業種では、課題解決の手法やビジネスモデルがまったく異なる場合があります。

　他業界からの学びは、自社の課題を解決するためのヒントを与えてくれたり、新たなリスクへの備え方を教えてくれたりします。

　ダイバーシティは、単なる倫理的な課題ではなく、ビジネスの成功に直結する戦略です。性別、国籍、年齢、専門分野を超えた多様な人材の意見を尊重し、組織内外の多様な視点を取り入れることは、リスクを早期に発見し、イノベーションを生み出すための羅針盤となるでしょう。

　これにより、組織は予期せぬトラブルを未然に防ぐだけでなく、より強靭で、変化に強い組織へと進化することができます。

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≪事例研究４≫　2024年1月2日、羽田空港で、海上保安庁機と日航機が激突

                ⇒ なぜ、海上保安庁機の機長は、管制官の指示を守れなかったのか？