未然防止活動にとって、三現主義をベースにした現場改善活動の知見・経験が、とても役に立ちます。ここでは、現場改善活動の重要性を確認します。
(1) トラブルは現場で起きている
すべてのトラブルや事故は、例外なく「現場」で起きています。会議室でいくらデータを分析しても、実際に何が起きているかを完全に理解することは不可能です。
現場に設備、原材料、作業者等、問題解決のあらゆるヒントが存在しています。未然防止を実現するためには、まず「現場第一」の考え方を組織文化として根付かせる活動、それがまさに現場改善です。
デスクワークだけに依存するマネジメントでは、真の原因究明はできず、効果的な未然防止策も打ちようがありません。ここが現場改善との共通点です。
(2) 三現主義とは
三現主義という言葉の意味は、「現場」で、「現物」を見て、「現実」を把握するということで、「現」が3つあるので、命名されました。現地・現物主義とも言います。私たちは常に現場を尊重する姿勢を持つことが大切です。
また、「現場」とは、「現」+「場」で、「現」は実現すること、「場」は場所のこと。すなわち、私たちが立案した仕組みや手順を「実現」する「場所」が「現場」であるとご理解ください。
そして、現場と言う意味には、場所だけでなく、そこで働いている人たちも含まれます。その現場は、製造現場に限らず、実務を実行しているところすべてが現場である。たとえば、物流の現場は倉庫や配送センター、設計の現場は、設計図面を作成しているところです。
(3) 現場改善の目的
現場改善は、QCD + S の視点から問題解決を図り、利益向上を目指す活動です。
(注)Q = Quality(品質)、C = Cost(コスト)、D = Delivery 、S = Safety(安全)
未然防止活動の目的も、QCD + S に起因するトラブル・事故が対象です。よって、現場改善と未然防止は、表裏一体の関係があると言えるでしょう。
(4) 未然防止には、現場主義の組織文化が欠かせない
未然防止を成功させるには、システムやマニュアル以上のものが必要です。それは「現場を重視する文化」です。三現主義を基盤に、現場の声に耳を傾け、現場の知恵を尊重し、現場での改善活動を継続的に積み重ねる。
この一連の取り組みが、トラブルや事故を未然に防ぐ強固な組織体質を作り上げます。デスクの前でデータを眺めるだけでなく、実際に現場に足を運び、現物に触れ、現実と向き合う。この基本の徹底が、真の未然防止力を育てるのです。
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