5-2 現場の考え方とマネジメントの対応 ⇒ 現場は正直、不平等を嫌う

 未然防止活動において、トラブルや事故を未然に防ぐためには、現場とマネジメントが一体となった強固な組織を築くことが不可欠です 。そのためには、現場の考え方を理解しておく必要があります。

(1) 現場の正直な声に耳を傾ける

 現場は、良くも悪くも正直です 。日々の業務で直面する課題や、潜在的なリスクの兆候について、最も正確で生々しい情報を持っているのは現場で働く人々です。彼らは、不具合やヒヤリハットについて、ありのままを報告します。もしマネジメントがその声に耳を傾けず、都合の悪い情報に蓋をしたり、責任追及を優先したりすれば、現場は正直に報告することを躊躇するようになります。

 

 マネジメントは、現場の意見を尊重し、真摯に受け止める姿勢を持つことが不可欠です 。これにより、現場は「自分の声が組織にとって重要である」と感じ、積極的に情報共有を行うようになります。この信頼関係こそが、トラブルの芽を早期に発見し、未然に防ぐための第一歩となるのです。

(2) 無理を押し付けず、公平に対応する

 現場は、理不尽な要求や不公平な扱いを嫌う傾向があります 。無理なスケジュールや、人員・資源の不足を無視した指示は、「嫌なことはやらない、やったふりをする」という行動につながる可能性があります 。また、現場で働く人々は、事務所で働く事務・技術員と自身が同等に扱われることを望んでいます 。不公平感は、組織への不満やモチベーションの低下を招き、結果として安全意識の欠如やミスの温床となります。

 

 マネジメントは、現場に無理を押し付けることなく、無理のない計画と適切なリソースを提供すべきです 。さらに、立場や職種に関係なく、すべての社員を同等に扱う公平な姿勢を示すことで、組織全体の士気が向上し、一体感が生まれます。

(3) 正当な評価と率先垂範を示す

 現場で働く人々は、自分たちの努力が正当に評価されないことに不満を感じます 。特に、地道な改善活動や安全への取り組みは、目に見える成果として現れにくい場合があります。このような努力に対してマネジメントが無反応であれば、現場のやる気は失われ、改善活動は停滞してしまうでしょう。

 

 また、現場はマネジメントの行動を常に注目しています 。口先だけの指示ではなく、自らが率先して規範を示す「率先垂範」の姿勢をマネジメントが取ることで、現場は尊敬と信頼を寄せ、自律的に動くようになります

 

 マネジメントは、現場の努力を正当に評価し、称賛する文化を築くことが重要です 。例えば、小さな改善であっても、それが組織の安全に貢献したことを明確に伝え、感謝の意を示すことで、現場のモチベーションは大きく向上します。マネジメントが現場と共に汗を流し、率先して行動する姿勢は、組織の安全文化を根付かせる上で何よりも説得力のあるメッセージとなります。

 

 これらの対応を通じて、マネジメントは現場との間に強固な信頼関係を築き、現場が持つ潜在的な力を最大限に引き出すことができるのです。この力こそが、未然防止を成功に導くことでしょう。