未然防止とは、第2章でお伝えした通り、将来のリスクに気付いて、対策し、将来起こるかもしれないトラブル・事故を未然に防ぐことです。リスクに気付くことができれば、対策を立案することは、さほど難しくありません。
問題は、如何にして将来リスクに気付くかです。まずは、リスクに気付くことが難しいことをご理解ください。
(1) リスクの存在と認識は別物
みなさんは、街やビルの中で、石や段差に気付かず、転びそうになったことはありませんか。なぜ気付かないのでしょうか? リスクが存在しているのに、リスクを認識できていないわけです。
つまり、リスクの存在と認識は別物です。これが、とても厄介で、未然防止活動を妨げる要因になっています。

(2) リスクに気づく習慣は日ごろの訓練から
リスクに気付く感性を養うべきですが、一朝一夕にできるものではありません。日ごろの訓練がとても大切です。そこで、1つのお勧めは、時間を見つけて、現場を観測することです。
ただ漫然と現場を見ているだけでは、意味がありません。テーマを決めて、たとえば、今日は「安全」に注目します。事故が起こりそうなリスクはないか、設備まわりや作業者の動きを注意深く観測します。
このとき意識していただきたいことは、まずは「あるべき姿」です。つまり、設備の配置や作業者の動きについて、本来あるべき姿は何か、それを念頭に置いて、目の前の状況を観測します。もしその間にギャップがあれば、それがリスクです。
「おかしい」「何か変」という感性を見逃さないことです。リスクに気付いたら、上司や関係者に報告し、即対策を打ってください。これが未然防止活動の第一歩です。
現場は日々変化しています。昨日は気付かなかったリスクでも、本日は気付くこともあります。ちょっとした見方の工夫で、気付けなかったリスクに段々気付けるようになります。この記事のタイトル「リスクに気付く習慣は日ごろの訓練から」の意味をご理解いただければと思います。
以上の内容から、次の式を導きました。
w 【リスクの気付き力】=【「あるべき姿」を見つける創造力】x【「現状の姿」の観察力】
(3) 将来リスクに気付く方法
ここでは、概念的に次の2つをお伝えします。
- 再発防止での根本原因と対策から将来リスクを想定する ⇒ 過去のふり見て、未来のふり直せ
- 他社・他業界の失敗から、自社の将来リスクを発見する ⇒ 他社のふり見て、自社のふり直せ。
具体的な方法については、次章以降、実践編でお伝えしていきます。

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