この記事では、なぜコミュニケーションミスが起こるのか、コミュニケーションミスによるトラブルをどう防ぐかについて、解説します。
≪伝える力≫ (話しが伝わらないのは、話し手の責任)
「言った、言わない、聞いていない」等々、日常のコミュニケーションで、話しが伝わらないと感じたことはありませんか。実は、聴き手に話が伝わっていない時点で、もうトラブルが始まっている可能性があります。話しが伝わらないのは、聴き手の理解力が足りないこともありますが、ほとんどの場合、話し手の伝え方に問題があると考えます。つまり、話し手に責任があるということです。
では、どう伝えればいいのでしょうか。次の4つの視点から伝わる伝え方を解説します。
❶具体的に、❷定量的に、❸一義的に ❹形容詞を使わずに伝える、
❶ 具体的に伝える
悪い例:タクシーを降りる際、運転手が、「忘れ物がないようにしてください。」と言いました。
この伝え方は、抽象的で分かり切ったことなので、乗客がこう言われても、特に何もチェックしないでしょう。その結果、座席の下に落としたスマートフォンに気付かず、タクシーから降りることになるかもしれません。
良い例:「座席の上と下を確認し、手荷物を持ち帰ってください。」
このように具体的に注意喚起すると、乗客が取るべき行動が明確になるので、言われた通り、乗客は確認することでしょう。そして、運転手は乗客の行動を見て、自分の意図が正しく乗客に伝わったことが分かります。
❷ 定量的に伝える
悪い例:建設現場で、設計ミスによって、重量物を引き上げるフックの脱落事故が発生しました。
この伝え方では、フックの耐荷重やフックが脱落したときの重量がわからないので、設計ミスの程度が不明です。
良い例:耐荷重4tのフックを設計すべきところ、500kg程度の荷重でフックが脱落しました。
定量的に伝えると、フックの設計不具合状況がよくわかります。この例では、設計上、耐荷重4tが要求されているにもかかわらず、わずか500kgでフックが脱落しました。つまり、設計レベルがとても低いということになり、この設計者の力量が疑われます。
❸ 一義的に伝える
悪い例:本件、できるだけ早く、回答してください。
「できるだけ早く」という伝え方では、緊急度が分からないので、明日中なのか、今週中なのか、人によって受け止め方が変わります。
良い例:本件、明日16時までに回答してください。明後日の朝一番で、御社の回答を含めた提案書を私たちの重要顧客に送る必要がありますので、何卒よろしくお願いいたします。
この伝え方では、回答の期限を明確にしているので、他の意味を排除できます。これが一義的な伝え方です。また、回答を受け取った後の行動を説明していますので、なぜ「あす16時まで」なのかも、相手に伝わります。
このように、一義的とは、1つだけの意味を有していて、他の意味を排除するので、誤解や思い違いが起こりません。
❹形容詞を使わずに伝える
悪い例:品質不良品が顧客へ流出しないように、強固な検査体制を構築しました。
この表現で、検査体制を強化したことは分かりますが、「強固な」では、どのような検査体制を構築したのか不明です。
良い例:品質不良品が顧客へ流出しないように、過去の流出事例を参考にして、検査項目、検査基準、検査方法、検査頻度、検査NG時の対応について見直し、検査手順書改定後、
検査員の教育を実施しました。
このように、検査手順を具体的に表現することで、どれだけ「強固な」検査体制を構築したかが分かります。形容詞を使わないということは、すなわち、具体的・定量的・一義的に伝えることと同じです。
形容詞は、小説や詩で感情を伝えるには有効かもしれませんが、誤解が致命傷になるビジネスの現場では不向きです。「形容詞に逃げない」表現を意識してください。伝える力が、劇的に変わります。
≪まとめ≫
話が伝わらないのは当たり前だと思ってください。形容詞を使わずに、具体的・定量的・一義的に伝えることで、話し手の意図が聴き手に伝わることでしょう。「伝える」ではなく、「伝わる」ことを意識して、「伝わる」ための工夫が必要です。
もう1つ、相手に伝えた後、自分の意図が伝わったかどうかを確認してください。仮に、伝え方でミスがあっても、相手に確認することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
コミュニケーションミスによるトラブルのほとんどが、伝え方に原因があることを多く見てきました。
≪実践コーナー≫
社内でのプレゼンの機会等を活用して、ぜひ、この伝わる伝え方をチームで実践してください。そして、伝えている内容が、形容詞を多用していないか、具体的・定量的・一義的に伝わっているか、チーム内で確かめてください。一流社員ほど、話しが具体的です。ぜひ、伝え方を工夫して、さらなる高みをめざしてください。
~以上~
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