我々は、仕事上の話し合いや相談するとき、双方向のコミュニケーションをとります。その手段は、対面、電話あるいはメールを活用します。しかし、そのコミュニケーションがいつもうまくいくとは限りません。よくあるのが、「言った言わない」「そんなこと聞いていない」というコミュニケーションのすれ違いです。
そのすれ違いがもとで人間関係が悪化するだけでなく、仕事上の大きなトラブルに発展するかもしれません。もしそうなると、トラブルの後始末で時間とコストを浪費することになり、本来やるべき仕事ができなくなります。
逆にコミュニケーションがうまくいけば、仕事がスムーズに進みます。この状態は誰もが望んでいることでしょう。では、なぜコミュニケーションギャップが起こるのでしょうか。
なぜコミュニケーションギャップが起こるのか
いくつかの原因が考えられますが、ここで取り上げたいことは、話し手の情報が一部「省略」されるということです。コミュニケーションは話し手と聞き手のあいだで進行していきます。つまり、話し手の情報を聞き手に伝えるわけですが、話し手が100%の情報を伝えているとは限りません。
たとえば、話し手が8時間の体験を聞き手に伝えるとき、8時間話すわけにはいきません。8時間の情報を伝える時間は状況にもよりますが、せいぜい5分か10分くらいでしょう。あるいは1分程度に概要を伝えることもあるかもしれません。
話し手によって省略された情報は聞き手によって穴埋めされる
では省略された情報に対して、聞き手はどういう対応をとるのでしょうか。それは、聞き手の知識・経験で省略された部分を埋めていくことになります。
聞き手によって穴埋めされた情報が、話し手によって省略された情報と同じであれば、コミュニケーションギャップは起こりません。はたしてそのようにうまく穴埋めされるでしょうか。その答えは、ほとんどの場合「No」です。だからコミュニケーションギャップが起こることになるわけです。
たとえば、課長が部下のAさんに「明日の会議で説明する資料を準備しておいてくれ」と指示しました。そこで、A さんは、確認のため、「はい分かりました。明日の会議で説明する資料を準備します」と復唱しました。はたして、これでコミュニケーションはうまくいったのでしょうか。
Aさんは、明日の会議が朝9時から始まることも、会議での説明資料のことも知っています。Aさんの理解は、会議資料を出席者の人数分コピーして、会議室に持っていくことでした。しかし、課長の意図は、会議スタートの10分前に、出席者一人ひとりの机に会議資料を置いておくことです。
課長の指示は、「会議資料を準備せよ」という情報を伝えていますが、どのように準備するかの情報が省略されているわけです。
完璧なコミュニケーションはあり得ない
では、コミュニケーションギャップを防ぐことができるのでしょうか。その答えは、「Yes」です。その対策を考える前に、次の2つの考え方が大切です。
1、完璧なコミュニケーションはあり得ないこと。
2、話し手と聞き手は、観点、判断基準が異なっていること。
この2つの前提を受け入れて、対策を講じる必要があります。では、その対策とは?
対策は、聞き手の観点、判断基準をもとに、自分の言葉で確かめること
コミュニケーションギャップを防ぐ対策は、省略されは情報を想定して、聞き手の言葉で確認することです。先の課長とAさんのやり取りで、Aさんは課長の指示を確認していますが、どこが間違っているのでしょうか。それは、課長の言葉をただオウム返しに復唱しているだけで、省略された情報を確認していることにはなっていません。
繰り返しますが、話し手と聞き手は、観点、判断基準が異なっています。だから、聞き手の観点と判断基準をもとに、聞き手自身の言葉で確認する必要があります。先の例でいうなら、こういう確認方法がベストです。
Aさんの対応として、「はい分かりました。会議資料を明日朝9時に持参します」と自分の理解した内容を伝えて確認します。すると課長は、「いやそうではなく、10分前までに出席者の前に会議資料を置いてくれ」となって、コミュニケーションギャップは解消できます。
話し手が伝えた情報を分かったつもりで確認せずに放っておくと、それがもとでトラブルに発展するかもしれません。完璧なコミュニケーションはあり得ないことを肝に銘じて、面倒がらずに、聞き手は自分の言葉で確認しましょう。これだけでも、コミュニケーションギャップによるトラブルは確実に減少することは間違いありません。
ここまでは、聞き手に焦点を当ててコミュニケーションギャップを防ぐ方法をお伝えしました。別のブログで、話し手に焦点を当ててコミュニケーションギャップを防ぐための「話し手の誤解予測」についてお伝えします。
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