多くの企業で再発防止は実行されていますが、共通した課題があります。それは、根本原因(真因)が追究されていないことです。もっと言えば、根本原因とは何かが理解されていません。
根本原因が追究されていないので、効果的な再発防止策が誘導できません。ここでは、どの企業でもほとんどできていない根本原因追究を中心にお伝えしていきます。
なお、欧米では、根本原因追究のことを、RCA = Root Cause Analysis と言っています。Root の意味は、根っこの根です。つまり、Root Cause が根本原因という意味になり、まさにこれが真因です。しかし、欧米でも、RCA がうまくできていません。それだけ難しい概念ですが、これを克服しない限り、未然防止どころか再発防止さえうまくいきません。
この記事を参考にしていただいて、ぜひ根本原因追究をマスターしてください。
(1) 直接原因と根本原因の違いとは
① 直接原因と根本原因の定義
- 直接原因 ⇒ トラブル(事故)を引き起こした直前の要因で、現場で目に見えやすい特徴があります。
- 根本原因 ⇒ 直接原因の背後に潜む、本質的な組織的・業務的、あるいは人的・心理的な要因です。現場では見えにくく、原因を深く分析することによって明らかになります。

② 事例
事象 ⇒ 製品表面にキズがある品質不良品が、顧客で発見された。
- 直接原因 ⇒ 出荷前検査でキズの確認を行っていなかった。
- 根本原因 ⇒ キズの定義(場所・大きさ・許容数など)が定められておらず、検査手順書も作成されていなかった。
③ 見分ける方法
直接原因と根本原因は、そこから導かれる再発防止策の有効性で判断できます。
- 直接原因の場合 ⇒ そこから導かれる対策は不十分になりやすく、同様のトラブルが再発する可能性が高い。
- 根本原因の場合 ⇒ そこから導かれる対策は効果的で、同じ種類のトラブルを防止できる可能性が高い。
④ まとめ
直接原因は「何が起きたか」という表面的な事実であり、根本原因は「なぜそれが起きたのか」という本質的な背景です。再発防止を目指すなら、直接原因で止まらず、根本原因まで掘り下げて特定することが不可欠です。
(2) 発生原因と流出原因
① 発生原因と流出原因の違い
根本原因は、性質の異なる2種類に分類できます。これらを混同すると、対策が不十分になります。
- 発生原因 ⇒ なぜ不具合が発生したのか。
- 流出原因 ⇒ なぜ不具合を社内で発見できず、顧客に流出したのか。
② 事例
事象 ⇒ 仕様違いの製品が顧客で発見された。
- 発生原因 ⇒ 部品Aを組み付けるべきところ、誤って部品Bを組み付けてしまった。
- 流出原因 ⇒ 検査工程が抜き取り方式で、当該部品を検査しなかった
③ 優先すべきこと
品質問題ではまず流出原因対策を実行し、顧客クレームの拡大を防ぐことが優先されます。
一方、安全問題では発生原因対策が最優先で、人命を守るための構造的・工程的な改善を行います。
(3) 再発防止のよくある悪い例
- 原因と現象の混同 ⇒ (1) 項でお伝えしましたが、多くの企業で原因と現象が区✖されていません。というよりは、現象を原因と取り違えて、そこから対策を誘導しているケースが散見されます。根本原因とは何か、もう一度振り返って掘り起こしてください。ください。
- 対策ありきの原因設定 ⇒ 先に対策を見つけてから、原因をこじつけていることを多く見てきました。原因ありきの対策を立案してください。
- 1つの原因で満足 ⇒ 大きなトラブル・事故ほど悪いことが重なって起こります。1つの原因で満足することなく、チームで違った視点から複数の原因を掘り起こしてください。
- 形容詞を使ったあいまい表現 ⇒ 「適切な対応」「強固な検査体制」のような形容詞を使った表現は曖昧で具体性がありません。詳細は、第4章 4-4. 伝える力1をご覧ください。
(4) 再発防止の基本原則
① 原因と対策の関係性
どの原因に対して、どの対策を打つか、原因と対策の関係性を明確にすべきです。さもないと、1つの対策がどの原因から誘導されたのかが分からず、なぜこの対策を実行しなければならないのかが、分かりません。もしそうなれば、対策実行への意識が薄れるかもしれません。


② 再発防止策を確実に実行するために
効果的な再発防止策をを立案しても、実行しなければ意味がありません。確実に実行するためには、1つひとつの対策ごとに、実施責任者と期日を明示する必要があります。
さらに、計画通りに実施されているかどうかをモニタリングして、進捗管理を強化してください。
(5) まとめ
再発防止の成否が、未然防止活動に大きく影響します。繰り返し申し上げますが、とにかく根本原因追究に最大限、取り組んでください。